タグ付きPDFとは?見た目が同じでも中身が違う

同じ見た目のPDFでも、スクリーンリーダーで開くと「まったく読めない」ものと「順序よく読める」ものがあります。 その違いを生むのが「タグ」です。タグはPDFアクセシビリティの中心概念であり、この後に読むどの記事にも登場します。
この記事で分かること
- タグとは何か、何のためにあるのか
- タグがないPDFで実際に起きること
- 自分のPDFにタグがあるかを確認する方法
- タグはいつ・どの工程で付くのか
タグ付きPDFとは
PDFは本来「紙をそのまま電子化する」ための形式で、内部には「この座標にこの文字を置く」という描画情報が入っています。描画情報だけでは、機械にはどこが見出しで、どこが本文で、どの順に読むべきかが分かりません。
そこでPDFには、文書の意味構造を記録する仕組みが用意されています。それがタグです。タグはPDF仕様(ISO 32000)で定義された正式な仕組みで、タグを持つPDFを「タグ付きPDF(Tagged PDF)」と呼びます。
HTMLを知っている人は、こう対応させると理解が早いはずです。
| 役割 | HTML | PDFのタグ |
|---|---|---|
| 見出し | <h1>〜<h6> | H1〜H6 |
| 段落 | <p> | P |
| 画像 | <img alt="..."> | Figure(+代替テキスト) |
| 表 | <table> <th> <td> | Table / TH / TD |
| リンク | <a> | Link |
| リスト | <ul> <li> | L / LI |
タグは見た目に一切影響しないという点が重要です。タグを付けても誌面は1ミリも変わりません。逆に言えば、見た目からはタグの有無が分からないため、「きれいなPDFだから大丈夫」という判断は成り立ちません。
タグがないPDFで起きること
スクリーンリーダーは、タグがないPDFを開くと、文字の座標情報から読む順序を推測します。その結果、次のようなことが起きます。
- 段組みの順序が乱れる: 2段組の誌面で、1段目と2段目の行が交互に読まれ、文章として意味が通らない
- 表の構造が伝わらない: セルの文字が羅列され、どの数字がどの項目のものか分からない
- 画像の内容が伝わらない: 画像は「図」などとしか読まれず、グラフの内容はまったく伝わらない
- 見出しで移動できない: 見出しへのジャンプ機能が使えず、長い文書を頭から全部聞くしかない
「読めない」のではなく「間違った順序と内容で読めてしまう」のが厄介な点です。読者は、それが正しい内容かどうかを確かめる手段を持ちません。
タグの有無を確認する方法
方法1: 文書のプロパティ(無料・Acrobat Readerで可)
- PDFをAcrobat Readerで開き、「文書のプロパティ」を開きます(Windowsでは Ctrl+D、Macでは Cmd+D)。
- 「概要」タブ下部の「タグ付きPDF」を見ます。「はい」ならタグが存在します。
方法2: タグパネル(Acrobat Proが必要)
Acrobat Proでは、タグパネルでタグの中身をツリー表示できます。ここで初めて「タグの中身が正しいか」を見られます。
- 見出しがH1〜H6になっているか(すべてPになっていないか)
- 表がTableとして構造化されているか
- 図にFigureタグと代替テキストがあるか
注意: 「タグ付きPDF: はい」は、タグが存在することしか意味しません。自動変換で生成されたおかしなタグでも「はい」になります。タグの存在の確認と品質の確認は別です。
タグはいつ・どこで付くのか
タグは後からAcrobatで手作業でも付けられますが、それは最終手段です。実務の基本は「元の制作ツールで、書き出し時に正しいタグが付くように作る」ことです。
| 制作ツール | タグが付く条件(概要) |
|---|---|
| Word | 見出しスタイル等を使って作り、エクスポートでPDF化する(「プリンターでPDF」はタグが付かない) |
| PowerPoint | レイアウトのプレースホルダーを使い、エクスポートでPDF化する |
| InDesign | 段落スタイルにタグを対応付け、「タグ付きPDFを作成」を有効にして書き出す |
| スキャナー | タグは付かない(画像のみ)。OCRと構造付けが別途必要 |
つまりタグの品質は、PDF化する時点ではなく、元データの作り方でほぼ決まります。各ツールでの作り方は「WordでアクセシブルPDFを作る方法」「PowerPointでアクセシブルPDFを作る方法」「InDesignでアクセシブルPDFを作る基本設定」で解説します。
よくある誤解
- 「テキストがコピーできる=タグがある」→ 誤りです。コピーできるのは文字情報がある証拠にすぎず、タグとは別です。
- 「タグは自動で付くから気にしなくてよい」→ 半分だけ正しいです。自動で付いたタグが正しい保証はなく、特に表・図・複雑なレイアウトは確認が必要です。
- 「しおり(ブックマーク)があればタグは不要」→ しおりとタグは別の仕組みです。しおりは目次ナビゲーション、タグは本文の構造情報です。
次の一歩
- 自分のPDFを本格的に調べる → 「PDFのアクセシビリティチェック方法まとめ」
- 元データから正しく作る → 「WordでアクセシブルPDFを作る方法」「InDesignでアクセシブルPDFを作る基本設定」
- 全体像に戻る → 「PDFアクセシビリティとは」
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